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電気外科手術 セルフスタディガイド

 
電気は危害をもたらす恐れがあります。電気の特性と電気手術器の機能およびその用途について理解することによって、電気を安全に使用することが可能です。

外科的手術には多種多様の電気メス技術が使用されています。
外科医、手術室看護師、およびその他の医療チームメンバーは、患者の処置を安全確実にするために、各々の技術の使用において予測される結果を認識しなければなりません。

術前、術中、および術後の医学面、看護面の推奨事項、禁忌事項の知識を持つことにより、患者にとって良い結果につながります。

概要

電気外科手術は、手術中の出血を迅速にコントロールする必要があることから広く使用されるようになりました。治療用として電気を使用するときには、常に危険が潜んでいます。このテキストでは、電気の原理、電気外科手術の原則、臨床応用、テクノロジー、推奨される訓練、および電気外科手術中の看護を説明しています。

必要不可欠な外科手術道具の歴史的発展

医学と手術の歴史の全体に渡って、出血をコントロールする必要性は常に懸案事項でした。知られている中で焼灼の治療的使用について述べている最古の手術の記録は、紀元前3000年と古い日付のあるエジプトのパピルス文書にあります。EdwinSmithパピルスは、最古の医師のひとりであるインホテップによって象形文字で書かれた手技の説明です。Edwin mithは、1862年にパピルスを手に入れたエジプト学者でした(Breasted、1930年)。焼灼に関する記述は腫瘍の処置のところに記載されています。焼灼はファイアードリルと呼ばれていました。つまり回転させると直ぐにシャフトに沿って熱が生じた機械で、焼灼として使用されていました(Wicker、1990年)。

焼灼は今世紀に入ってから疾病過程を処置し、出血を制御するのに使用され続けた、と仮定するのが妥当です。古代ギリシャにおける医学の父であるヒポクラテス(紀元前460〜377年)は、痔を処置するための焼灼の使用について述べています(Lifshutz、2004年)。ギリシャ人のThales(科学の父)は初めて琥珀の摩擦特性について述べており、琥珀を擦ると他の物質に対する吸引力が生じることを記しました。琥珀のギリシャ語は「Elecktron」で、電気の語源となっています(Greenwood、1931年)。

焼灼は中世を通じて使用されました。その使用は、その時代の最も偉大な外科医のひとり一現代外科手術の父であるAlbucasisよって普及されました。彼は、およそ1013年から1106年までスペインで生活して働いていました(Goodrich、2004年)。Albucasisは32巻の医学百科事典を書き、その中で、彼が設計した器具および装置に加えて、彼が行った手技を詳細に説明し、焼灼の使用を提唱しました。彼の書き記したものは多くの言語に翻訳され、ヨーロッパの多くの外科医は彼の方法を使って訓練されました (Zahoor、2006年)。

16世紀に入ると焼灼の使用が減少し始めました。AmbroisePare (1510-1590年)はフランスの外科医で、戦場の外傷の処置で経験を積み、名声を博しました。Pareは焼灼を使用していましたが、1552年に、足を切断するのに熱いアイロンよりも結紮を用いたと言われています。彼は、焼灼を用いて焼いたときよりも、傷の治癒が良く、痛みもかなり少なかったと述べました。Pareは後に専ら結紮の使用を推奨しました。その時代の一般的な治療方法は、単に焼灼を適用するよりも高い技術が要求される縫合糸を使用することだったようです。そして傷は、焼灼を使用したときに生じた組織の損傷の後よりも、より良く治癒しました(Harvey、1929年)。

William Gilbert (1540-1603年)は研究者のひとりであり、その仕事は現代の発電機の開発の基礎になりました。彼はイギリスに住んでおり、エリザベス女王の宮廷医師でした。彼は磁力に興味を持ち、「electricity」(電気)という用語を最初に使用しました(Kelly、1932年)。

彼は、1600年に、「DeMagnete」と題した本で自らの業績を発表しました。BookIで、彼は電気を使った自身の実験について説明しています。その実験で、彼は琥珀の摩擦特性、または静電気特性を研究しました。その業績により、彼は電気治療の父の称号を得ました(Greenwood、1931年)。

17世紀には世界中で、電気を使った実験が行なわれ、電気治療の利点における興味を高めました。同じ時代に、ヨーロッパとアメリカで自然科学における分野で躍進が何度か起こり、それぞれの発見が次の基礎になりました。Goldwyn(1979年)とVender(2005年)は、3つの時代の間に電気外科治療の知識が進展したと示唆しています。最初の時代は、1786年より前の静電気を使った実験を伴い、2番目の時代は1786年から1831年までの筋肉のけいれんと直流電気療法による発見、3番目の時代は、1831年から現代までの範囲です。

静電気に関連した発見は、事象に関するありのままの説明を初めて考察したものでした。これは電荷が物体の上に蓄積して電流が流れていないので、静電気と呼ばれています。たとえ電流が流れていなくても、電荷はある物体から別の物体ヘジャンプできます(Kurtus、2006年)。最も一般的な例は、カーペットの上を歩いていて、電灯のスイッチや他の人などの別の物体に電荷がジャンプするときにショックを受けることです。多くの研究者が静電気を使って実験しました。疑う余地なく、これらの中で最も有名なのはBenjaminFranklin(1706-1790年)でした。既に、1749年には、Franklinは静電気のスパークと電光との間に類似性を認めました。それらの推論から彼の有名な凧の実験に至り、そこで凧から流れる電光を誘導しました。彼はライデン瓶に電光を集めることができ、電光と静電気には両方とも同じ特性があることを証明しました。

BenjaminFranklinの業績は、地面(アース)に向かって落雷することによる損傷と火災を防ぐために、建物に避雷針を据え付けることに至ったことです(Walter、2003年)。
電気治療の2番目の時代は、LuigiGalvani(1737-1798年)と、彼が電荷で接触したときにカエルの足で観察した筋肉のけいれんで始まりました。彼は、研究で保存したカエルの足を使ってけいれんを再現することができ、電気生理学が誕生し(Corrosion Doctors、2006年)。同じ時代に働きながら、sandroVolta(1745-1827年) はGalvaniのよう電気的な特性が含まれることを見つけ出しました。Voltaは、いわゆる「ボルタ電堆」、すなわち最初の電池を製作しました。彼は、厚紙で分けて酸性溶液に浸した異なる種類の金属を2つ積み重ねました。ボルタ電堆は持続した電流を送ることができました。今日の湿電池は同じ原理で作動しています。電気工ネルギーの尺度であるボルト(volt)はVoltaに由来しています(Corrosion Doctors、2006年)。

電気手術の開発の3番目の時代は、米国のJosephHenryと英国のMichael Faradayと共に1831年に始まりました。2人とも磁気と電気の間の関係についての研究を行い、どちらも磁気を動かすことで電気を引き起こすことができると結論しました。電磁気力をめぐる発見が電気医療機器の改良と、電報電話の開発に繋がりました (Goldwyn、1979年)。
1800年代後半は、電気の治療的使用に関する知識の劇的な増加が見られました。1881年にWilliamJ.Mortonは、100MHの範囲の電流が、周波数が低い方の範囲での電流に関連した疼痛とショックを引き起こさなかったことを発見しました。1891年までにはフランスのArsenned’Arsonvalが、神経筋への影響を引
き起こすことなく100kHまで交流周波数を下げられることを証明しました(Pearce、1986年)。

1900年代初期までに、研究者たちは、波形の変動と組織の作用を引き起こす高周波電流を改変することができました。組織の作用について述べるのに研究者たちが使用した名称は、今日もなお使用されています。Walter dekeating-HartとSimon Pozzeは1907年に、表面組織の炭化を描写するために、電光のラテン語である「fulgur」から「fulguration」(高周波療法/電気凝固術)を使用しました。1909年にDoyenが「coagulation」(コアギュレーション)について述べました。これはラテン語で「凝固する」という意味です。Doyenは、電気的な性能を改善するために、彼がバイポーラ(双極)と呼ぶ2番目の電極を使う報告を最初に行いました(Pollack、2000年)。

「Desiccate」(乾燥する)という語は、1914年にアメリカ医学会誌でWilliamClarkによって導入されました。「彼は、皮壊するのにちょうど足りるだけの加熱による充血と炭化の間の作用について述べています。「Desiccate」は、水分ることを意味するラテン語の「desiccare」に由来しています。(Clark、 1914年)。

フランスの外科医、JosephA.Riviereは、電気外科手術を最初に臨床で使用したことで高い評価を得ています。彼は、スパークを使って音楽家の手の潰瘍を処置し、繰り返し処置した結果、貴瘍が治癒したことを認めました。「彼の結果は、1900年で開催された医療用電気学と放射線学の第1回国際会議で報告されました(Kelly、1932年)。ニューヨークの医師EdwinBeerは1910年に、アメリカ医学会誌に膀胱腫瘍に関する彼の処置を発表しました。彼は、自らの処置方法、使用した装置、組織の影響、および高周波電流の使用による治療結果について概説しています(Beer、1910年)。ニューヨークのA.Raymond Stevens医師は、1913年に高周波電流を用いている2つの症例を報告し、使い易さと効率の良さが彼の治療結果の成功に貢献していると述べています(Stevens、1913年)1917年、H.G. Bugbee医師は Urologic and Cutaneous Review誌に、自身の泌尿器閉塞の処置結果を発表しました(Bugbee、1917年)。高周波電流を適切使用した初期の報告は、多くの科学者と臨床医の努力により、時間と共に進化したテクノロジーの実態を表しています。同様に、多くの電気外科手術装置が開発されました。Lee De Forestは、1907年2月10日に、電気外科手術器に関する最初の特許を出願しました。彼はこれを、手術中に患
者で使用するように特異的に設計されている、と説明しました(Geddes、2003年)。

電気外科手術の歴史的な開発は、長い時間をかけて多くの人がその前進に貢献してきたことを私たちに語っています。現在の電気外科手術テクノロジーはWilliam T.BovieとHarvey Cushingに最も密接に関連しています。

William T. Bovieは1882年9月11日にMichiganAugustaに生まれ、Harvard Cancer Commissionに留まって働くうちに(O’Connor、1995年)、彼は電気外科手術に興味を持つようになりました。彼の仕事には、がん患者をラジウムで処置することが含まれていました。彼は、「ラジウム放射能から得られる焼灼効果は高周波電流を使用しても達成できる」と確信するようになりました。彼の電気手術器が最初に開発されたのは、ラジウムに代わるものとして使用するためでした。そしてHarveyCushingとの共同研究によって、それに先立ついくつかの電気手術器より、手術室での使用に適したものになりました。

BovieとCushingは、販売用ユニットを製造するためにLiebel-Flarsheimとも一緒に研究しました。電気外科手術器の販売は、何年もの間需要が少なく、絶えず改良点を変更していたので採算が取れませんでした。伝えられるところによると、BovieとCushingがテクノロジーの改良点を開発すると、以前の機械は廃棄されました。Bovieは初めに2,00ドルで販売しましたが、1932年までにその価格は1,250ドルに下がってしまいました。Bovieが彼の発明から経済的な利を得ることは決してありませんでした。彼は自らの特許をLiebel-Flarsheim1ドルで売りました (Goldwyn、1979年)。

Harvey William Cushingは1869年4月8日にオハイオ州Clevelandに生まれ、1887年にエール大学、1891年にハーバード大学医学部に入り、1896年に、彼はBaltimorJohns Hopkins大学病院でWilliamHalstedと共に研修医を始めました。彼は1900年にそこで研修医を完了しました。1901年にボストンに戻り、PeterBentBrigham病院に勤めました。CushingがT.Bovieと共同作業を始めたのはボストンでした(Fulton、1946年)。

手術中の血液の管理は常にCushingの懸案事項でした。Cushingは1911年の論文「脳腫瘍の手術における出血の管理」で、ろう、綿撒糸、および銀製クリップを含め、止血を成し遂げるために使用した方法の記録を示しています(Cushing、2002年)。止血を達成するために多種多様な方法があるにもかかわらず、出血に対する恐怖から、まだなお手術不可能と考えられる患者がいました。

Cushingは、1925年の医学会議の期間に、初めて電気外科手術器の臨床使用を熟考したと報告されています。Cushingの2人の研修医が電気外科手術の実演を見ていると、Cushingが彼らに歩み寄ってきました。1人がCushingに脳で機械を使用することを提案しました。Cushingは立ち止まり、考え込んだ様子で実演が進むのを見ていました(Voorhees、2005年)。後に彼はハーバード大学でBovieを訪ねました。彼らの共同作業は手術室で使用する装置をBovieとともにCushingが準備することから始まりました。その後2年間にわたって2人は一緒に働き、患者にその機器を使い、機器とその付属品を改良して洗練させました。1928年の論文は、時間をかけて証明された彼らの成功を報告しました(Cushing、1928年)。

電気の基礎

電気は、物体を作るプラスに帯電した粒子とマイナスに帯電した粒子が存在することから生じる自然現状です、全ての物体は原子で構成されています。原子は、(マイナスに帯電した)電子、(プラスに帯電した)陽子、(中性の)中性子の粒子からなっています。同数の電子と用紙を含む原子は中性に帯電しています。基部の原子から他の原子へ電子を移動させる力が導入されると、帯電が変わります、陽子より電子の方が少ない原子はプラスに帯電し、陽子よりも電子の方が多い原子はマイナスに帯電します。移動中に同じ電荷は反発し、異なる電荷は引きつけ合います。電子の動きを電気と呼びます。電気には患者の処置に影響し得る一貫した特性が2つあります。光とほぼ同じ速度で移動する電気は、(1)常に抵抗が最も少ない経路を辿り、(2)常に接地(アース)に戻ろうとします(Columbia Encyclopedia、2006年)

電流

電流は電子の流れであり、アンペア単位で測定されます。手術室で使用される2種類の電流は、直流(DC)と交流(AC)です。
直流は単純回路を使用し、電子は一方向にしか流れません。電池は通常、これら単純回路の一部です。回路を完成させるには、エネルギーが電池の一方の端末から流れて、もう一方の端末に戻らなければなりません。
交流(AC)は、電子の流れる方向が交互に入れ替わります。入れ替わる頻度(周波数)は、1秒あたりのサイクル数、すなわちヘルッ(Hz)単位で測定されます。1ヘルツは1秒あたり1サイクルに相当します。家庭の電源では東日本で1秒間に50回、西日本では60回で入れ替わり、手術室で使用される多くの電気装
置も同じ電源を使用しています。50〜60Hzの電流は人体の筋神経に対して刺激、損傷を引き起こします。「交流が(RF)範囲(約100,000Hz)に入ると、神経や筋肉は基本的に刺激を受けなくなります(Hutchisson、1998年)。

インピーダンス/抵抗

インピーダンス/抵抗はオーム単位で測定します。電気手術器を使用している間のインピーダンスのひとつは患者です。

電圧

ボルト単位で測定される電圧は、電流を電場に通して流す力です。計測単位はぼると(V)です。1オームの抵抗を通して1アンペアの電流を流す電圧が1ボルト(V)になります。電気外科手術器の電圧が、回路に電子を押し通す力になります。

出力

出力は、電気の流れにより作り出されるエネルギーです。出力はワット単位で測定されます。電気外科手術器では、外科医が使用する出力設定は、ワット単位で、主に数値で表示されます。

電気外科手術の原理

電気焼灼器

電気焼灼器は手術室で使用される最も単純な電気システムです。これは単純な直流電流(DC)を発生させるのにバッテリー電源を使用します。この電流は、器具から離れ、患者の組織を伝って移動することは絶対にありません。一例としては、手持ち式の眼科用焼灼器が挙げられます(図1)。これは、眼科の手術や、その他のほとんど出血しない軽微な手技で最も頻繁に使用されます。これは組織をカットすることも、大きな出血部位を凝固することもできないので、その使用は限られています。組織がワイ
ヤー電極にくっつくことがあり得るので更に制限されます。「電気焼灼器」または「焼灼器」の用語は、誤ってあらゆる種類の電気焼灼器を説明するのに使用されることが多々有りますが、本来は単純な直流電流の焼灼器を示す用語です。

電気外科手術スタディガイド 図1
図1-手持ち式の電気焼灼器

電気外科手術と高周波電流

なぜ電気外科手術器が患者を感電させないのか、は一般的によく受ける質問です。その答えは、電気外科手術器は高周波電流を使用しているからです。電気外科手術器は50〜60Hzの電流を取り込んで、それを高周波領域まで上昇させます。高周波電流は非常に素早く向きが変わるため、細胞が電流に反応できません。神経や筋肉の刺激は約100,000Hzで止まります。A Mラジオは550~1500キロヘルツ(kHz)の範囲で活動しています。電気外科手術器は一般的に200kHz~3.3メガヘルツ(MHz)の範囲を使用しています(図2)。それは神経筋刺激や感電死が起こり得ると考えられる範囲を十分に上回っています(Harris、1978年)

電気外科手術スタディガイド 図2
図2-周波数スペクトル

バイポーラ電気外科手術

バイポーラ電気外科手術は、接近して位置する2本の電極によって回路が完成する電流を用います。一方の電極はプラスに、他方の電極はマイナスになります。電流は2つの電極の間のみ流れます(Tucker、1998年)。バイポーラ器具には、フォーセプス以外に鉗子、はさみ、および組織を把持するあご型の製品もあります。2本の電極が共に非常に近くにあるので、低電圧でも組織への効果が得られます。ほとんどのバイポーラ装置は、不必要に焼け焦がすことなく止血を行うため、低い電圧の切開波形を使用しています。バイポーラが使用されている時は電流が器具の両極間の組織に閉じ込められているので、対極板は必要ありません(図3)。

電気外科手術スタディガイド 図3
図3-バイポーラ回路

バイポーラは非常に安全な電気外科手術テクノロジーですが、いくつかの欠点もあります。バイポーラは組織にスパークできず、電圧が低いので大きな出血部位には効果があまりありません。(mitchell 1978年)。しかし、最新の新しいバイポーラシステムではより高電圧のバイポーラ「マクロ」またはバイポーラ「切開」モードを搭載し、特に新しい世代のバイポーラ切開用器具に対応できるように設計されているものもあります。
バイポーラは脳神経外科手術や婦人科手術に幅広く使用されています。高い電圧のモノポーラ電気手術機を使用するのが躊躇されているような部位に使用する場合では、(例えば、ペースメーカーや埋め込み式心臓除細動器/除細動器と一緒に)バイポーラを使用する方がより安全です。

モノポーラ電気外科手術

組織に作用する範囲がより大きく、より強力であるため、電気外科手術を行う場合に最も頻繁に使用される方法がモノポーラです。モノポーラ電気外科手術器を使用しているとき、電気手術器により作り出された電流はアクティブ電極を通って患者の組織に入ります。その後、電流は患者の体内を通過して患者対極り、電流が集められて安全に電気手術器へ戻ります(図4)。電流の流れは一方向ではなく、アクティブ電極、患者、患者対極板間で双方向に流れます。使用するモノポーラ電気手術器のタイプの理解、および外科医と看護師の正しい取扱いにより電流を下記の通り正しい経路で患者の体内に流すことが出来ます。

電気外科手術スタディガイド 図4
図4-モノポーラ回路

電流の集中/密度

モノポーラおよびバイポーラを使用する目的は、望ましい臨床効果を得るための熱を生み出すことです(Massarwehら、2006年)。高周波電流が集中すると熱が生じます。生じる熱量によって、組織に作用する範囲が決まります。電流の集中すなわち密度は、電流が流れる面積のサイズによって異なります。小さな面積では電流がより集中し、より高い抵抗が生じるため、電流が狭い部分を通過するのにより大きな力が必要になり、結果としてより多くの熱が生じます。反対に電流が大きな面積では、電流が通過するのに抵抗は少なくなり、生じる熱量も減少します(図5)。

電気外科手術スタディガイド 図5
図5-電流の集中/密度

電気手術器のモードの種類

基本的な波形(モード)は、カット(蒸散)、コアギュレーション(凝固)、およびブレンドです。どのモードでも組織を乾燥させるのに使用できます。電流が組織にどのように流れるかによりその効果は変化します。

電気手術器の切開(蒸散)

カットと呼ばれる電気手術器の切開は、連続的な正弦波形です(図6)。

電気外科手術スタディガイド 図6
図6-切開波形

電流の供給が連続しているので、効率的に組織を蒸散させるには低い電圧が必要となります。切開効果を得るための正しい方法は、アクティブ電極の先端を、患者組織に接触させずにごく僅かに離した状態を維持します。この方法は、短時間で組織の温度が高くなり、細胞内液が急速に膨張して、細胞破裂すなわち蒸散に
至ります(Munro、1995年)。蒸散は組織をきれいに分けることができます(図7)。また切開モードは組織の乾燥凝固を行なうための適切な選択肢でもあります。

電気外科手術スタディガイド 図7
図7-蒸散または切開

放電止血

放電止血はコアギュレーション(凝固)またはCOAGと呼ばれ、電流の供給を間欠的にする、または弱めた方法です。このモードを使っているときには、電流は出力がOnの時間の約6パーセントしか組織に供給されません(図8)。

電気外科手術スタディガイド 図8
図8-凝固波形

これはデューティサイクルと言われています。コアギュレーション電流は、ピークからピークまでに9,000〜10,000ボルトと高い電圧のスパークを発生させます。組織は波形がスパークするときに加熱され、スパークとスパークまでの間に冷却されるので、波形の94%のOff-サイクル中に細胞の凝固が起こります。放電止血を行うときには、凝固すべき組織の僅かに上部でアクティブ電極を操作してください(図9)。

電気外科手術スタディガイド 図9
図9-放電止血

モード

電気手術器のブレンドモードは、切開モードの一機能(一般的に電気手術器の黄色い側)で切開を行ないながら、ある程度の止血効果も得られます(Tucker、1998年)。デューティ(オン/オフ)サイクルを変更することによってそれぞれ異なった凝固能力と切開電流を供給できるブレンド波形をいくつか発生させることができます(図10)。代表的な電気手術器で使用できるブレンド波形の例は次のとおりです。

(例)
ブレンド1=50%オン/50%オフ
ブレンド2=40%オン/60%オフ
ブレンド3=25%オン/75%オフ
グレンドのバリエーションは、製造業者の間で異なります。しかし、一般的には、ブレンド番号が大きくなるほど、凝固の程度が高くなります。

電気外科手術スタディガイド 図10
図10-ブレンド波形

乾燥

デシケーションすなわち組織の乾燥は、切開または凝固いずれかのモードを使用しているときに行うことができます。アクティブ電極の先端が組織と直接接触しているときにはいつでも、組織の乾燥が進行しています(図11)。次に、切開または凝固の波形を使うかどうかを選択します。組織の乾燥を行なうための望ましい波形は切開波形です。

電気外科手術スタディガイド 図11
図11-デシケーション

組織に影響を与える他の様々な要因

止血を達成する重要な因子は、外科医が使用を選択する波形であり、カット、コアギュレーション、またはブレンドがあります。アクティブ電極の使用方法、つまりアクティブ電極が組織と直接接触しているかどうかも同様に重要です。その他にも電気手術器の組織効果に影響を与える要因がいろいろあります。

出力

手術中に使用される出力設定は、組織の作用に決定的な影響があります。常に、希望する組織の作用を得るのに可能な限りの最も低い出力を使用してください。出力設定は患者毎、また手術の手技毎に異なります。体重と身長のバランスがとれた筋肉のがっしりした患者は、肥満した患者やひどく痩せている患者よりも低い出力設定で手術が行なえます。手術部位に対する対極板の位置も筋肉量が多いところで、必ずできるだけ手術部位に近づけてください。対極板が手術部位の近くにあると、外科医はより低い出力設定を用いることができます。電流は2つの部位間の組織量(インピーダンス/抵抗)を買いて流れるため対極板の位置は出力設定に影響を与えます。

時間

外科医がアクティブ電極を作動させる時間の長さが、組織に与える熱効果を決定します。作動させる時間が長すぎると、組織の損傷が広く深い組織損傷を引き起こします。逆に作動時間が短すぎると、望ましい組織効果が得られません。

アクティブ電極

アクティブ電極のサイズは、組織への作用に影響します。大きなアクティブ電極は、電流がより広い表面積上を拡散するため、同じ組織の作用を得るには小さい方の電極よりも出力設定を高くする必要があります(図12)。

電気外科手術スタディガイド 図12
図12-出力設定における電流密度の影響

アクティブ電極の刃先は汚れているものよりもきれいな方が、低い出力で同様の効果が得られます。またステンレススチールブレードを使用し、「スクラッチパッド」を使って継続的に清掃すると、結果的にできる電極表面の傷にエシャー(焦げつき)が堆積して清掃が難しくなります(図13)。

電気外科手術スタディガイド 図13
図13-溝ができたステンレススチールブレードの表面がエジャー(焦げ付き)で覆われている状態

湿らせたスポンジで清掃できるようにコーティングされた電極を使うと、エシャー(焦げつき)の堆積を軽減できます。電極にテフロン(PTFE)またはシリコーンエラストマーでコーティングした電極は湿らせたスポンジで汚れをきれいに拭き取れるので、「スクラッチパッド」を使用せずに済みます(図14)。

電気外科手術スタディガイド 図14
図14-コーティングされたアクティブ電極
組織

患者の組織により電気手術器による組織への効果は異なります。電流は、対極板を通って電気手術器に戻る回路を完結しようとするので、患者の身体の物理的な特性によって、電流に対するインピーダンスの量が決まります。細身で筋肉のがっしりした患者は、肥満した患者やひどく痩せている患者よりも、ずっと良く電流を通過させます。

電気外科手術テクノロジー

電気手術器は、外科医が最も広く一般的に使用している医療機器のひとつです。手術手技と同様に、電気外科手術のテクノロジーも長期に渡って進歩してきました。しかし、患者ケアの改善への挑戦は、医療機器製造業者の目標の一つでもあります。患者に最も安全で効果的な処置を行うために、外科医と手術室看護師は、長年の技術と新しい技術の両方に精通していなければなりません。

接地型電気手術器

1800年代後半から1900年代前半は、手術に高周波電気手術器が使用され始めました。初期の電気外科手術器は接地型でした。接地型の電気手術器を使用する場合、地面により電気手術器の回路が完成します。スパーク-ギャップシステムは高出力、高性能で、長い間外科医たちの間で好まれた装置でした(Massarweh、2006年)。接地型システムにより起こりやすい主な事故としては、電流の分流が発生し得ることです。
もし電流が、より容易に(インピーダンス/抵抗が少ない)、またはより速く接地に戻る経路があり、電流が十分に集中すると、電流が患者の身体から抜け出るところであればどこでも熱傷が起きる可能性があります(図15)。

電気外科手術スタディガイド 図15
図15-電流の分流

ここでは、患者の手が手術台の側面に触れているところ、膝がスターラップに接触しているところなど、いくつもの可能性のある代替部位が考えられます(図16)。

電気外科手術スタディガイド 図16
図16-代替部位の熱傷

接地型電気手術器の初期のモデルでは、患者対極板を患者に設置したかどうかによらず、外科医は電気外科手術を行うことができました。これは結果として患者に熱傷をもたらしてしまいました。次世代のモデルは、患者対極板が電気手術器に差し込まれていないとアラームが鳴るコード故障アラームを搭載しました。ただ欠点もあり、たとえ患者対極板が患者に装着されていなくて、コードが電気手術器に差し込まれていれば電気外科手術を行えるということでした。熱傷は、対極板が患者に装着されていたときにも患者対極板部位で発生する危険性がありました。

絶縁型(ソリッドステート)電気手術器

高周波電気手術器の最初の革新は、1968年にソリッドステート型電気手術器が導入されたことで起こりました。航空宇宙産業出身のひとりの科学者が、絶縁回路を採用した非常に小型でコンパクトな電気手術器を開発しました。電流は電気手術器を起点ににており、患者対極板以外で患者に接触しているあらゆる接体を全て無視するように設計されているので、患者の安全において非常に大きな進歩でした。絶縁型電気手術器は、電流が電気手術器に戻れなければ作動しなくなるので、電流の分流は起こらず、代替部位の熱傷の可能性を排除しました(図17)。

電気外科手術スタディガイド 図17
図17-絶縁回路

絶縁型電気手術器は、対極板を患者に装着しなければ作動しません。しかし、次項に述べる安全機能を持たない場合、電気手術器対極板/患者接触面での接触状態を検知することはできません。手術中に患者対極板/接触面の接触状態が何らかの理由で面積又は質の面で悪化すると、対極板部位における熱傷の危険性があります(図18)。手術室の看護師は手術中を通して、患者対極板が良好な状態で患者と接触していることを確認しなければなりません。

電気外科手術スタディガイド 図18
図18-対極板部位の熱傷

対極板接触状態モニター

電気外科手術における次の大きな革新技術は、対極板接触状態モニターシステム(REM機能)を搭載した患者対極板が1981年に導入されたことです。導電面が2面に別れた対極板を使用し、検知電流が患者と患者対極板との接触状態を常時モニターする仕組みになっています(図19)。

電気外科手術スタディガイド 図19
図19-対極板接触状態監視システム

対極板の接触状態を監視するシステムは、接触状態の問題で患者に熱傷が発生し得る前に、アラーム音と警告ランプで知らせると同時に、電気手術器本体の出力を停止するように設計されています。患者対極板部位の熱傷の原因は対極板の剥がれなどによる接触面積の縮小のためで、対極板部位熱傷の原因の大部分を占めていることから、対極板接触状態監視システムは患者にとって重要な安全装置であると言えます。この技術的躍進は、患者自身の組織状態がフィードバックメカニズムの一部として考慮された、電気手術器の発明以来最初のものでした。電気外科手術に伴う熱傷の大半は患者対極板接触状態監視システムによって防止可能です(ECRI、1999)。

アルゴンガス強化電気外科手術

1980年代後半に、アルゴンガス供給システムが開発され、電気手術器と組み合わされました。この電気外科手術テクノロジーをレーザーと混同、比較してはいけません。アルゴンガスは不活性つまり科学的に反応しないガスで、空気より重く、容易にイオン化します。イオン化したガスの流れが電気手術器の電流を包み込むことによって組織に対してビーム状の火花を飛ばします(図20)。電流をビーム状にスムーズに集中することができるので、より滑らかで、よりしなやかなエシャーが形成されます。同時に、アルゴンガスは血液を分散させて、視野も改善します。不活性でより重いアルゴンガスは術野で空気と置き代わるので、煙の発生も少なくなります。アルゴンガス強化電気外科手術は、外科的手術において出血を減らし手術時間を減少させることができます (Rothrock、1999年)。

電気外科手術スタディガイド 図20
図20-アルゴンガス強化電気外科手術

ティッシュフェクト™テクノロジー

1990年代半ばに、コンピュータ制御のフィードバックシステムを組み入れた電気手術器が導入されました。組織の電気的抵抗値(インピーダンス)を感知し、一貫した臨床効果を得るために即座に対応するテクノロジーです。このフィードバックシステムにより、外科医は、あらゆる種類の組織から一貫した臨床効果を得ることができます。フィードバックメカニズムが搭載された電気手術器は、一貫した臨床効果を維持するために電流と電圧を自動周節します(図21)。このシステムは頻繁に出力設定調節する必要がなく、より低い出力設定値で良好な効果が得られるため、患者の傷害の危険性も低減します(Eggleston、1997年)。

電気外科手術スタディガイド 図21
図21-テッシュフェクト™テクノロジー

ティッシュフュージョンテクノロジー

1999年に、外科医にとって血管および血管を含む組織を迅速・確実に結紮するための新しいテクノロジーが開発されました。特別なバイポーラ電気外科手術システムは、腹腔鏡下、開腹の外科手術の両方で、血管および血管を含む組織束を確実に閉鎖します。これは、血管壁を融合して恒久的なシールを形成するために、専用のハンドピースにより組織に加える圧力との最適な組み合わせで血管壁を完全に融合・一体化し、永久的なシールを作り出します(図22)。

電気外科手術スタディガイド 図22
図22-テッシュフュージョンテクノロジーの操作

その出力はコンピュータ-フィードバック制御されているので、特別に設計されたハンドピースの刃先間で組織を把持すると最小の時間で確実にシーリングすることができます。その結果、1回の出力で、最大7mm径までの血管と組織束を確実にシーリングできます。このシーリングは強力で恒久的であり、正常な動脈の収縮期圧の3倍の圧力に耐えることが示されてきました。熱の伝播は従来のバイポーラと比べて減少し、超音波凝固切開装置と同程度です。シール部分の外観は、再生されたコラーゲンとエラスチンで透き通っており、実際に組織が変性して恒久的なシールを形成しています。電流はハンドピースの先端間のみで、絶対に患者の身体を通らないので、ペースメーカーなどのモノポーラが禁忌であると考えられる患者にとっても非常に安全な電気外科手術装置の選択肢になります。

ティッシュフュージョンテクノロジー

■バイポーラジェネレーター

  • 低電圧 180〜287.5V
  • 高電流4A(最低)
  • ティッシュ・レスポンス
  • クローズループフィードバック回路

■ハンドピース

  • 最適な圧力
  • 開腹用と腹腔鏡下用

■システムの作動原理

  • 血管、組織束、およびリンパ管に最適な圧力をかける
  • エネルギー供給サイクル
  • 組織の最初のインピーダンス/抵抗を測定し、自動的に適切なエネルギー設定を選択する
  • 制御された出力を連続して供給する
  • シールの完了を検知して、出力を止める
電気外科手術スタディガイド 図23
図23-テクノロジーの発展

クローズループコアグテクノロジー

電気外科手術器の機能は着実に向上し、2006年にクローズループ制御のコアギュレーションを可能にした飛躍的進歩を遂げました(図23)。クローズループ制御とオープンループ制御のコドュレーションの組織検知能力の劇的な差は、実際のオシロスコープを比べると最も顕著です(図24)。クローズループ制御を行わないコアギュレーションモードでは、デューティサイクルの+極と-極は等しくありません。ピーク間電圧を制御すると、電圧はデューティサイクルの+極とー極の両方で同様になり、よりー貫した臨床効果が得られます。

電気外科手術スタディガイド 図24
図24-クローズループ制御の比較

低侵襲手術におけるモノポーラ電気外科手術の潜在的危険性

1980年代から、低侵襲外科手術(MIS)が着実に増加しており、その増加傾向は続くと予測されます。手術室と外来手術部だけがMISを行う場所ではありません。放射線科に加えて内視鏡室で症例数の増加が見られ、低侵襲的な方法で複雑な処置が行われてきました。MISの数が増えるに連れて、モノポーラの使用に関連した患者の安全上の問題が非常に多くなりました。高周波電流が関係していた腹腔鏡検査の後の重篤な疾患および死亡が報告されてきました(ECR、1995年)。電気手術で内視鏡を使用した結果、危険な状況が生じる可能性があります。その一部を以下に挙げます。

  • 直流結合
  • 絶縁不良
  • 容量結合
  • 余熱による外傷
  • 手術室内の煙
  • 電磁気干渉

これらのひとつひとつが、患者の傷害を引き起こす可能性があります。外科医や手術室スタッフは、これらの事故がどのように、いつ起こるのか、また、患者に対するリスクの軽減方法を知らなければなりません。潜在的な危険の根本原因を決定するには、アクティブ電極とカニューレシステムを4つのゾーンに分けると便利です(図25)。

電気外科手術スタディガイド 図25
図25-損傷の4つのゾーン

■ゾーン1 ― アクティブ電極の先端の小さな領域、および外科医が直接見られる唯一の範囲
■ゾーン2 ― アクティブ電極の先端からカニューレの末端まで、外科医の視野外
■ゾーン3 ― アクティブ電極のカニューレシステムで覆われた範やはり外科医の視野外
■ゾーン4 ― 患者の身体の外にあるアクティブ電極とカニューレの部分

最大の懸念と可能性のある患者の危険は、絶縁不良、直接結合または容量結合に起因した分流が原因で、外科医の視野から外れたゾーン2と3で目に見えない高周波分流が発生していることです(Wu、2000年)。

直接結合は、アクティブ電極が、患者の体内の他の導電性機器の近く、またはそれと直接的に接触して作動しているときに起こります。直接結合は、ゾーン1、2または3で起こり得ます。直接結合は外科医の視野外で起こり、電流が十分に集まっているので患者に傷害が起こり得ます。絶縁不良は、アクティブ電極の絶縁コーティングが劣化しているときに起こります。これは、粗雑に取り扱ったことによる機器の破損から、コアギュレーションなどの高電圧電気手術電流を使用したことに起因する絶縁不良まで、いろいろな形で起こり得ます。絶縁の破損は器具を洗浄しているときに起こり得ますが、手術中のカニューレシステムからの出し入れによっても生じ得ます。高電圧の高周波電流は、アクティブ電極の絶縁を通り抜けるだけの十分な力があります。またアクティブ電極の一部に、医奈機器開発協会(AAMI) によって設定された電気外科手術器の基準に適合しない可能性という懸念もあります。ゾーン2または3で起こる絶縁不良は、外科医に気づかれない場合が多く、電流の集中により、隣接する臓器を損傷してしまうことがあり得ます(図26)。

電気外科手術スタディガイド 図26
図26-絶縁不良

内視鏡の電気外科手術の中で、最も理解されていないものが容量結合です。容量結合は2つの導電帯の間に絶縁体が挟まれている(コンデンサが形成されている)時に発生する電気的な現象です。腹腔鏡下の場合、コンデンサの形成は、周囲を絶縁したアクティブ電極を金属カニューレの中に挿入した状態で形成されます(図27)。

電気外科手術スタディガイド 図27
図27-コンデンサのアクティブ電極/カニューレ

外科医がアクティブ電極を作動しているとき、アクティブ電極から伝導性の金属力ニューレの中に、容量的に結合した電流を誘導することができます。その後、カニューレが患者体内臓器と接触すると、そのエネルギーがその臓器に放電し、損傷を引き起こす危険性がありますMunro、2004年)。すべて金属でできたカニューレを使用していると、カニューレに蓄えられていた電気エネルギーは、カニューレと筋肉の腹壁の間の比較的大きな接触面を通って患者の体内に分散する傾向があります。接触面積が大きいと電気エネルギーを分散させる働きをし、集中度が高い面積に比べてはるかに危険は少なくなります。こうした理由から、カニューレを固定するのにプラスチック製のアンカーを使うのは賢明ではありません。なぜならば、プラスチック製のアンカーは腹壁から電流を絶縁し、カニューレの他の範囲に電流を蓄積し得る可能性が増えるからです。腹腔鏡下の電気外科手術の場合、患者0リスクを軽減するために手術室スタッフと外科医が取り置が数点あります。

■使用前に絶縁部分を注意深く点検する
■可能な限り低い出力(電圧)設定で使用する
■低電圧(切開)波形(Munro、 2004年) を使用
■アクティブ電極は長時間連続作動させずに間欠的に作動使用する
■開回路の状態では使用しない
■他の金属または導電体接近または直接接触した状態でアクティブ電極を作動させない
■可能な場合はバイポーラ出力を使用する
■カニューレの選択において
 もっとも安全な選択肢として、すべて金属でできたカニューレを選択する
 ハイブリッド型(金属とプラスチックの合成)を使用してはならない

腹腔鏡下手術で高周波電気手術器を使用中に患者の安全性を高めるための最も重要な方法のひとつは、最新のテクノロジーを活用することです。テクノロジーの進歩は、ほとんどが古い世代の装置にあった問題を解決し、それらの改善によって患者、術者をより安全にします。技術的な改善には以下が含まれます。
■低電圧波形で容量結合を軽減するためのティッシュレスポンス機能搭載の電気手術器
■カットとコアギュレーション両方の波形で容量結合を軽減するためのティッシュフェクト”センシングテクノロジー搭載の電気手術器
■バイポーラ型のベッセルシーリングシステム
■絶縁不良と容量結合の危険性を最小限にするアクティブ電極モニター

電気手術器用アクセサリー

電気手術器は電気手術システムを構成する一部分にすぎません。ジェネレーターは電気手術を構成する内の僅か25%です。他の75%には、ペンシル、対極板およびユーザーが含まれます。これらの3つは、ジェネレーターよりもはるかに高い率で問題が発生する可能性があります(Harrington、1994年)。手術室スタッフは電気手術器用アクセサリーについて、安全で有効方法を含めて精通していなければなりません。

アクティブ電極

アクティブ電極は、目的とした組織に集中した電流を供給します。バイポーラ用、モノポーラ用の電気外科手術で使用できるアクティブ電極の種類は豊富です。アクティブ電極のペンシルまたは鉗子は、ペンシルに付いているハンドスイッチ、またはフットペダルで出力できます。ペンシルの先端は、ニードル、ブレード、ボール、ループといったさまざまな種類が接続できます(図28)。腹腔鏡下で使用する場合も、使用可能なアクティブ電極はたくさんあります。また同じハンドピースで吸引とコアギュレーションが組み合わされ、使用できるアクティブ電極もあります。アクティブ電極にはディスポーザブルと再使用可能なみに「リポーザブル」と呼ばれているものもあります。リポーザブル製品は、ある一定の回数を使用したら一部分のみ廃棄、交換します。

電気外科手術スタディガイド 図28
図28-アクティブ電極

アクティブ電極に関連する潜在的な危険性のひとつは、チップ上のエシャー(焦げつき)の堆積です。堆積したエシャーにより、インピーダンスすなわち先端の電気抵抗が大きく増加し、火災の危険をもたらす可能性があります。十分に加熱するとエシャーは発火源や燃料源として火災の危険をもたらす可能性があります。エシャーがアクティブ電極に重積している場合は、手術室スタッフか業者の推奨する方法に従ってそれを除去してください。エシャーを除去する際にスクラッチパッドを使用できますが、スクラッチする度に細かい溝が残ります。エシャーがその溝の中に蓄積すると、除去するのが不可能になり、チップの抵抗が高くなります。焦げ付き防止の加工が施されたアクティブ電極はエシャーの除去が容易になりますが、頻繁にクリーニングする必要がなくなるわけではありません。テフロン(PTFE)やエラストマーシリコンコーティングなどの材料でできているアクティブ電極は、湿らせたスポンジで拭くことができます(図29)。アクティブ電極は、作動直後は極めて熱いので、湿らせたスポンジを推奨しています。湿らせたスポンジを使うとクリーニングが容易になり、スポンジが偶発的に発火するリスクが軽減します。コーティングされた電極は、適切な出力設定など使用については製造業者の推奨方法に従って使用してください。

電気外科手術スタディガイド 図29
図29-コーティングされたアクティブ電極

ホルスター

ホルスターは、外科医と手術室看護師が利用できる必要不可欠な安全パーツのひとつです。アクティブ電極が使用されていないときには、直介ナースがホルスターに入れて、術野の近くに置いてください。ホルスターは製造業者によって推奨されたものだけが、耐熱性と耐火性の安全基準に適合しています。プラスチックのポーチ、折り畳んだタオル、又はその他の間に合わせのも使用することは患者の安全を脅かしかねないので、絶対にしないでください。

患者対極板

患者対極板は、患者の体内から安全にモノポーラ電流を回収します。患者対極板は、金属プレートから大きなジェルパッド、そして2つの部分から成る発泡体パッドまで、多くの種類があります。再使用可能な金属プレートはステンレススチールでできており、患者の下に敷いて使用します。後から開発された金属プレートは、ホイルでコーティングされたボール紙製のプレートです。金属プレートを使用するときには必ず、患者の皮膚の導電性を高め、プレートと患者の皮膚との間の隙間を埋めるために導電性ゲルを使用しなければなりません。接触状態は患者のサイズと、患者とプレートの間の状態によって左右されます。どちらも身体の凹凸に一致しているわけではないので、効果は製品によりまちまちで、いずれも対極板の接触状態を監視することはできません。

ジェル式対極板はディスポーザブルで、いろいろなサイズと形があります。これらは身体の凹凸に良く付着し、通常はパッドをしっかり固定するために粘着性のへりが付いています。管理上の注意点としては、ジェルが導電面の片側に寄ってしまうのを防ぐために、水平にして保存するように注意しなければなりません。ジェルが片側に大きく偏ってしまったものを使用すると、熱傷につながりかねません。また長期間の保管により、ジェルが乾燥してしまうと、導電性が劣化し、熱傷の原因になり得ます。プリジェル式対極板を使用するときには、在庫の保管期間に注意し、適切に保存するよう注意しなければなりません。

導電性接着剤型対極板は、ジェルの代わりに導電面全体に接着剤が塗られています。接着剤が患者の皮膚との接触状態を良好に保ち、導電性をアップします。導電性接着剤型対極板は、乾燥接着剤を使用したものと、水分含有量の多い導電性粘着剤を使用した2種類のものがあります。両方とも患者の体の凹凸にぴったり合わせることができます。
対極板には、導電面が二つに分かれた2面式のものもあります。2面に分かれている理由は「検知電流回路」を形成するためで、対極板接触状態モニターシステム付きの電気手術器使用時に、患者と対極板との接触面の電気抵抗値を常時モニターする仕組みになっています。これは、抵抗値と接触面の状態には密接な関連があるためです。対極板の接触面の抵抗値が危険なレベルまで上昇すると、熱傷が起きる前に電気手術器の出力を遮断するように設計されています。電気手術器を安全に使用するには患者対極板を正しく装着することが重要です。患者対極板はできるだけ手術部位に近く、筋肉量が多いところに装着してください。瘢痕組織や骨ばった隆起など、電気抵抗値が高い部位は避けてください。抵抗が高い患者組織ほど、対極板への電流の流れを妨げます。電気抵抗値が高くなるほど、熱傷が起こる可能性が大きくなります(Fairchild、1996年)。

インプラント周囲の瘢痕組織は、抵抗値を高め、対極板への電流の流れを妨げます。対極板部位は清潔にして乾燥させ、多量の体毛がある場合は除去してください。また手術中に液体が溜まりやすいところに患者対極板を装着してはいけません。患者がペーカーを装着している場合、対極板はできるだけぺーンカーから離して装着してください。また、そのペースメーカーの製造業者に問い合わせて、ペースメーカーが電気的な干渉やすいかどうかを確認してください。使用する患者対極板は製造業者の推奨する使用方法を必ず遵守してください。

煙の排出

1994年、米国手術室看護師協会(AORN)は、「患者および手術室スタッフは、電気外科手術中に発生する煙を吸入することの危険から保護されるべきである」とする推奨基準を発表しました(AORN、2006年)。レーザーや、電気手術器、またはヒトの組織をエアロゾル化するその他の手術装置でも、煙流が生じるときには常に排煙装置を手術準備に加えるべきです。毒性ガスと発癌性物質が手術の煙に含まれていることが確認されました(UImer、1997年)。ホルムアルデヒドとベンゼンは、煙に含まれている多くの物質の中の2つです。アクリロニトリルとシアン化水素は煙に存在する無色の毒性ガスで、皮膚と肺から容易に吸収されます(Barrett、2004年)。

病院と手術室の空気は、息切れ、目と呼吸器の炎症、鼻炎、接触性皮膚炎、頭痛、関節痛、記憶障害および集中力の欠如を引き起こし得る「化学物質のスープ」と言われてきました。医療従事者への長期の影響を測定する定量方法はありませんでしたが、たばこの煙のように、手術の煙を吸い込む影響は蓄積します。1996年9月、国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は、疾病対策センター(CDC) 医療施設ネットワークを通して危険警告をした。その警告で、医療従事者を保護するために、レーザーと電気外科手術での煙を排出させてろ過するよう推奨しました。この警告は、NIOSHのウェブサイトに今なお推奨として示されています(CDC/NIOSH、2006年)。
腹腔鏡下の手技中に、手術スタッフはもとより、患者も煙の害にさらされることがあり得ます。一酸化炭素は、曝露レベルに基づいて、頭痛、悪心、疲労、嘔吐、不整脈、乳酸アシドーシスおよび失神を含む症状を引き起こすことがあり得ます(Vremen1995年)。腹腔鏡下手術中に一酸化炭素が腹膜から吸収されると、患者の血中のメトへモグロビンとカルボキシヘモグロビンの濃度が上昇します。これは手術中の患者にとって危険を呈する可能性があります(Ott、1997年)。
外科医と手術室スタッフもまた、カニューレシステムから濃縮した煙が押し寄せてくるため、腹腔鏡下手術中に手術の煙を吸い込むリスクが増加します。手術中はメーター付き排煙器を通して終始明瞭な視野を維持するために、排煙可能な腹腔鏡ハンドピースの使用が推奨されています。カニューレから放出される空気はいずれも、排煙器で回収すべきです(Healthstream.2004年)。手術の煙に含まれる化学物質の一覧は、すべての煙を排出させてろ過するという方針を策定するのに十分な理由になります(図30)。

  • アセチレン
  • エタン
  • 4-メチルフェノール
  • アクロロイン
  • エテン
  • 2-メチルプロパノール(アルデヒド)
  • アクリロニトリル
  • エチレン
  • メチルプラジン
  • アルキルベンゼン
  • エチルベンゼン
  • フェノール
  • ベンズアルデヒド
  • エチニルベンゼン
  • プロペン
  • ベンゼン
  • ホルムアルデヒド
  • 2-プロピレンニトリル
  • ブタジエン
  • フルフラール(アルデヒド)
  • ピリジン
  • ブテン
  • ヘキサデコン酸
  • ピロール(アミン)
  • 3-ブテネニトリル
  • シアン化水素
  • スチレン
  • 一酸化炭素
  • インドール(アミン)
  • トルエン(炭化水素)
  • クレゾール
  • イソブテン
  • 1-ウンデセン(炭化水素)
  • 1-デセン(炭化水素)
  • メタン
  • キシレン
  • 2,3-ジヒドロインデン(炭化水素)
  • 3-メチルブテナル(アルデヒド)
  • 6-メチルインドール(アミン)

図30-手術中の煙に含まれる化学物質

手術室看護師は、手術の前に、煙の発生量を予想し、適切な排煙システムを選択してください。排煙装置は持ち運びのできるもので、容易にセットアップして使用できなければいけません。三重のフィルターが付いているろ過システムは最大の防御になります。システムは、大きな粒子をろ過するためのプレフィルター、微細粒子を捕獲するためのULPAフィルター、および処置中に生じる毒性ガスを吸収する、あるいは結合するためのチャコールフィルターで構成されます(図31)。

電気外科手術スタディガイド 図31
図31-三重のフィルター

排煙装置は、1分間に約50立方フィートの空気をシステムを通して吸引する能力を持つことができなければなりません。この吸引力により最も効率的な排煙が行え、また状況に応じて適切な排煙器具を柔軟に選択、接続することができます。多様な手術の手技では、出力設定を変えることができる排煙器が最も使用されることになるでしょう(図32)。

電気外科手術スタディガイド 図32
図32-排煙システム

また最も便利なのは、電気手術ペンシルに取り付けるアタッチメントです(図33)。

電気外科手術スタディガイド 図33
図33-排煙アタッチメントを取り付けた電気手術器ペンシル

煙の発生源に近接して煙を捉えることが出来るという利点があります。より大量の煙が発生する手術の場合では手術室スタッフが状況に応じて吸引力を色々設定できる装置を選択してください。

手術室における患者ケア

電気外科手術中の患者のケアは、日常的かつ体系的な手順に従うことで更に向上させることができます。電気外科手術中の患者ケアのポイントは次のとおりです。

術前

■どの電気手術器が使用されるか、またその使用方法を確認すること。特定の指示事項または疑問については電気手術器の取扱説明書や添付文書を参照する。
■手術に必要な器具やアクセサリーを全て準備する。アクセサリーはそのユニットで使用するために開発され、認可されているものだけを使用する。
■各種アラームシステムが作動するかどうかチェックする。
■可燃性の麻酔剤の使用は避ける。
■EKGモ二ター用電極(心電図用電極)は手術部位からできるだけ離して装着する。
■電気手術器本体の電源コードやプラグ類をチェックして電気手術器に差し込む。延長コードを使用しない。
■破損やひび割れ、擦り減り、テープの巻きつけ等のある電源コードやアクセサリーコードは使用しない。
■臨床工学技士による点検シールをチェックし、電気手術器本体がメンテナンスの有効期限内であることを確認する。
■プラスチックの袋でフットペダルを被う。
■手術記録に電気手術器本体のシリアル番号を記入する。
■正確な対極板装着位置と、対極板部位の皮膚状態を記録する。
■患者対極板を絶対に切ったり改造したりしない。

術中

■アルコール製の前処理剤を使用する場合には、乾燥してからドレープをかける。
■意図する手術効果が得られる範囲で、可能な限り最も低い出力設定を使用する。通常より非常に高い出力設定が必要な場合、システムのどこかに異常がある可能性がある。
■コード類はつまずく危険がないように配置すること。電源コードを他の器具に巻きつけたりしない。
■患者を体位変換したときには、患者対極板をチェックし、良好な接触状態を保っているかどうか確認する。患者対極板は貼り直してはいけない。患者対極板を剥がした場合には新しい対極板を使用する。
■アクティブ電極を使用していない間は、術野から取り除き、患者と接触しないようにする。製造業者が推奨する絶縁されたホルスターを常時使用する。
■アクティブ電極や対極板のコードをコイル状に巻きつけてはいけない。漏れ電流が増加し、患者が障害を受ける可能性がある。
■可能なら、バジング(止血鉗子にアクティブ電極の刃先を当てて止血すること)は行わない。もしバジングを行う場合には、止血鉗子にアクティブ電極を接触させてから出力させること。以上の方法で手術スタッフへの望ましくない電気ショックを防止することが出来る。
■アイピース付きの絶縁した内視鏡を使用すること。
■アクティブ電極は清潔に保つこと。エシャーが堆積すると電気抵抗値が増加し、切開、凝固性能が低下し、より高い出力設定値が必要となる。
■出力中のアクティブアクセサリー(ペンシル等)を液体に浸さない。
■使用したアクティブ電極の種類を手術記録に記録する。
■もし電気手術器のアラームが鳴ったら、システムをチェックして適切に機能しているかどうか確認すること。
■電気手術器の上面を液体の保管スペースとして使用しないこと。液体をこぼすと故障を引き起こすことがある。

術後

■出力設定をすべてゼロ(または最小)にする。
■電気手術器本体の電源を切る。
■全てのコード類は、コードではなくプラグを持って外す。
■患者対極板部位の皮膚をチェックし、熱傷などの障害がないことを確認する(AORN、2006年)。
■患者対極板を剥がした後に点検する。検知できていない熱傷などの問題が発生していた場合、熱傷の痕跡が対極板に残っているはずである。
■ディスポーザブル品はすべて病院の方針に従って廃棄する。
■フットペダルを覆っていたプラスチックの袋を取り外して廃棄する。
■電気手術器本体、フットペダルおよび電源コードを清掃する。
■電源コードをカートのフックに巻きつけて保管する。
■すべてのリユーザブルアクセサリーを洗浄する。

まとめ

外科医および手術室看護師は、専門的知識・技術を最新の製品テクノロジーと組み合わせて、質が高く、安全で高度な患者ケアを提供する機会があります。電気外科手術を行う際には、正しい知識と技術が決定的に重要な役割を果たします。よく訓練された外科医および看護師が、患者にとって最も強い見方となるのです。


情報提供元: Medtronic コヴィディエンジャパン株式会社