1 高周波電流と電気メス
電気メス本体から発生する高周波電流は、細いメス先で高密度になり、生体の切開・凝固を行います。 そして生体に流れ込んだ高周波電流は、面積の広い対極板により、密度の低い状態で安全に回収されるというのが電気メスの基本です。 電気メスは、高周波電流が狭い部分に集中することによって発生する「ジュール熱」というものを利用しています。
2 電気メスとバイポーラの器械的なしくみ
電気メス 「モノポーラ」はメス先が1本であることに由来します。 この1本のメス先から高周波電流を流して、 バイポーラでは1本のメス先から高周波電流を流し、反対側のメス先から回収する仕組みとなっています。
4 モノポーラとは?(切開)
※波形(連続・?)メス先
モノポーラは、電気メスのメス先(アクティブ電極)が1本です。 その一本のアクティブ電極から高周波電流を流して、生体組織へ流します。 高周波電流は、反対側に置かれた対極板で回収された後、電気メスに戻ります。
5 モノポーラとは?(凝固)
凝固とは、電気メス先に接触している細胞を熱凝固させることで、血管を閉塞することです。凝固するためには、電気メスのモードを凝固に設定し、メス先を血管に近づけて通電させます。通電時間は短く、火花が飛ばないようにします。
モノポーラの凝固は、直径0.5mm以下の細い血管ではメス先で通電するだけで止血が得られることがあります。
モノポーラの凝固の利点は、切開と同じメス先を使えることや、対極板が広い面積を持つために電流密度が低くなり、神経や筋肉への刺激が少ないことです。
6 電極の種類
ディスポーザブル、リユーザブル電極があり、症例に合わせた長さの電極があります
ブレード電極、ニードル電極、ボール電極
7 アルゴンビームとは
アルゴンビームとは、アルゴンガスを高圧電場で加速して生成したイオンビームのことです。アルゴンビームは、様々な用途に利用されています。例えば、
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アルゴンビームコアギュレーターは、高周波の電気的なエネルギーをアルゴンビームに乗せて、目的とする部位に非接触型のスプレー凝固電流として作用させる装置です。外科手術や内視鏡手術で出血を止めたり、組織を切除したりするのに用いられます。
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アルゴンレーザーは、アルゴンガスを励起媒質として使用したレーザーです。青や緑の可視光を発することができます。医療や科学研究、光学通信などに用いられます。
8 バイポーラとは?(切開)
バイポーラは、主に組織の凝固(止血)に用いられますが、切開にも使える場合があります。
電気メスでは、高周波電流をメス先に集中させて発熱し、接触した細胞を消滅させることで切開します。
バイポーラの切開は、メス先の一方から高周波電流を流し、反対側のメス先で回収することで、組織水分の気化爆発を引き起こします。この気化爆発により、強い切開力と蒸散力を得ることができます。
バイポーラの切開の利点は、電流がメス先間で循環するため、対極板が不要であることや、神経や筋肉への刺激が少ないことです。切開力はモノポーラよりも劣り、火花が飛ぶ可能性もあります。
9 バイポーラとは?(凝固)
バイポーラは、主に組織の凝固(止血)に用いられますが、切開にも使える場合があります。
凝固とは、電気メス先に接触している細胞を熱凝固させることで、血管を閉塞することです。凝固するためには、電気メスのモードを凝固に設定し、メス先を血管に近づけて通電させます。通電時間は短く、火花が飛ばないようにします。
バイポーラの凝固は、メス先の一方から高周波電流を流し、反対側のメス先で回収することで、組織水分の気化爆発を引き起こします。この気化爆発により、強い凝固力と蒸散力を得ることができます。
バイポーラの凝固の利点は、電流がメス先間で循環するため、対極板が不要であることや、神経や筋肉への刺激が少ないことです。凝固力がモノポーラよりも劣り、火花が飛ぶ可能性もあります。
10 モノポーラとバイポーラの生体組織損傷範囲
モノポーラは、電極から高周波電流を生体組織へ流します。生体組織へ流します。一方でバイポーラは、モノポーラと異なり電気メスのメス先(アクティブ電極)が2本となり、一本の電極から高周波電流を流した後、もう一方の電極にて回収しています。モノポーラでは、高周波電流の流れる量が多く、組織損傷の範囲が広くなります。 一方でバイポーラは、電極が近いため高周波電流の流れる量が少なく、電流のループ回路の特徴から電極で挟んだ生体組織にのみになり、組織損傷が小さいです。
11 電気メスの使用上の注意
エタノールを含有している薬剤を使用する場合は、乾燥させ、エタノール蒸気の拡散を確認してから使用することが必要です。また、気管開窓時の使用は控え、止血を行う際も、気管チューブの損傷やバルーン収縮による酸素漏れに十分注意する必要があります。
実際に起きた医療事故の例とその原因
■ケース1:対極版の貼り方が不十分なことによる熱傷事故
対極版の貼り方が不十分なことによる熱傷事故については、事例があります。対極版の面積が適切でない場合、局所的な発熱によって患者の皮膚に熱傷を引き起こす可能性があります。そのため、電気メスの出力や患者の体の大きさに応じて適切なサイズの対極板を選ぶことが重要です。
■ケース2:腹部の消毒薬に引火した事故
電気メスを使用する際に引火性の消毒用アルコールがある場合は小さな火花が引火したという事例が報告されています。
■ケース3:気管内チューブのすぐ近くで電気メスを使用して気管熱傷を起こした事故気管内チューブ自体が電気メスの熱で高温となり、気管熱傷を起こして死亡した事例が報告されています。このような事故を防ぐためには、酸素投与下では、チューブの燃焼にとどまらず、咽頭部・気管支・肺まで延焼する可能性があるため、酸素中では突然発火したり、発火によって引火しやすい消毒薬を使用しないことが重要です。
主な電気メス
Maxium Triad FT10 SACTY VIO3